舌下免疫療法
スギ花粉・ダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法
舌下免疫療法をご存じですか?
2010年より日本国内で始まった臨床治験の結果、スギ花粉症・ダニアレルギー性鼻炎における舌下免疫療法の効果が実証され、スギは2014年10月から、ダニは2016年12月から保険適応となっています。
特徴
・注射などの痛みがない。
・アナフィラキシーなどの全身性の重篤な副作用が皮下注射よりも少ない。
スギ花粉の舌下免役療法
こんな人におすすめです。
・スギ花粉症で悩んでいる
症状を軽くしたい、ほぼ完全に治したい、というお考えの方にはご検討ください。
・薬を減量、中止したい
飲み薬やスプレーをしても症状が軽減しないことや、眠くなることがあります。
車の運転をするためなど、眠気を避けるために飲み薬の服用を控えている方など副作用に悩まれている方にお勧めしています。
・手術治療には抵抗がある
薬で効果が満足できず、また体に傷を入れるのにはどうしても抵抗があるという方はご検討ください。
・長期にわたる効果を期待している人
薬やレーザーなどの治療効果はあるものの、ずっと効果が持続するわけではありません。
根本的に体質を改善したいとお考えの方にお勧めしています。
治療法の流れ
治療の開始はスギ花粉シーズンをさけてスタートします。
花粉飛散が始まる直前あるいは飛散時期では効果が無く、安全性にも問題があるので開始できません。
<開始時期>
安全性の観点からスギ花粉の飛散が始まる直前や飛散時期に始められません。
治療開始時期は5月~12月の間となります。
※1月~4月中は治療開始できません。
<毎日投与>
スギ花粉が飛んでいないシーズンも毎日投与していただく必要性があります。
<継続期間>
最低でも3年以上は治療を継続してください。
通常、治療期間は3~5年です。
初回は当院で投与します。
投与した後は30分間、必ず待合室で経過を見ます。
初めて投与する日は時間がかかりますので、余裕をもってお越しください。
<通院頻度の目安>
治療開始後、2週間に一回通院していただいております。
その後は治療期間中は少なくとも1か月に1回は通院してください。
副作用について
スギ花粉症エキスは極めて安全につくられていますので口にいれても安全です。
注射による方法で稀に見られるアナフィラキシーのような重篤な副作用の報告もありません。
仮に副作用が出ても口腔内など局所の反応でとどまり、これらの症状は通常は数分—数時間でおさまってきます。
ごく軽度の副作用も含めて、下記のような報告があります。
・口内、口唇のかゆみ・浮腫、感覚の異常
・蕁麻疹
・喘息発作
・耳のかゆみ、喉の炎症や違和感、くしゃみ、鼻みず、鼻詰まり、目のかゆみ、咳、喘息など
<注意点>
初めての方は、副作用の観察のために投与後30分間は院内で経過観察します。
また内服後数時間は激しい運動は避けていただきます。
ご自宅での投薬の際は、治療薬の用法、用量は必ずお守りください。
もしご自宅で副作用の症状が出た場合でも、上記のごとく軽度で自然におさまるケースがほとんどです。
蕁麻疹、喘息様発作などの症状が出る場合は、次回診察まで治療を中止してください。
また抗ヒスタミン剤など一般的な花粉症のお薬の内服がお手元にありましたら、服用してください。
症状がどんどんひどくなるようでしたら、ご連絡いただくか救急車を呼び、救急対応可能な病院に連絡してください。
Q&A
スギ花粉症が完全に治り、薬が不要になったという方は20%前後です。
お薬を減らすことができたという方も含めて症状が改善する人は60~80%ぐらいですが、残念ながら全く効かなかったという方もいらっしゃいます。
症状を改善する治療とご理解ください。
残念ながら現状では、日本国内で保険適応となっているのはスギのみであり、スギ以外のアレルギーの方には効果がありません。
また同時に複数のアレルギーをお持ちの方も、効果はスギに限られるものと思われます。
欧米ではイネ科、ブタクサ、カバノキ・ハウスダストなどで舌下免疫の臨床効果が確認されていますので、
日本でスギ花粉症に対するこの方法が広く行われるようになれば他の花粉についても試されるかもしれません。
以前に治療を受けたことがある場合、どの程度効果が見込めるのわかりません。
適応は慎重に検討する必要があります。
もう一度再開する場合、最初のお薬が少ないところからやり直しになります。
薬を増やした状態で中断してしまった後に、そのまま再開すると口の中が腫れたり、
蕁麻疹などのアレルギー症状が出てしまう可能性があるからです。
これまでの報告では、子供さんに対する効果の方が高いのではないかといわれています。
これは体の大きさに対してお薬を多く投与できるため、効果も出やすいと考えられています。
妊婦さんへの治療に関しては、万が一、重篤な副作用が出た場合、
母体が不安定になってしまう事で胎児への悪影響が出ないとも限りません。
妊娠初期に行うような事は避けるべきでしょう。
免疫療法そのものは胎児への催奇形性は無いと言われていますから、妊娠前から既に減感作を行っていて、
維持の段階に来ている方ならば、妊娠を理由に治療を中断する必要はありません。
喘息で治療中の方や蕁麻疹がある方(副作用が出やすい)、
高血圧で内服(βブロッカー)されている方、その他、免疫疾患、心血管疾患、呼吸器疾患、など重篤な合併症をお持ちの方は、
副作用の問題から、治療を受けることができません。
症状がありましたら無理に我慢せず飲んでいただいて結構です。
免疫療法は根治を目指すだけでなく、症状の軽減を目指す治療ですので、
内服は続けていただき、最終的に減量、中止を目指していきます。
なお内服で副作用のリスクも軽減できると考えられます。
シーズン中に治療を開始すると副作用が出やすくなる可能性があります。
また花粉が飛散する前(10月~11月)から開始していただき、春先に続けていれは症状が軽くなります。
しかし途中でやめると、翌年以降の効果は持続しません。
最低でも2年、また3年以上行うと効果が持続しますので、当院では3年~5年の治療をおすすめしています。
舌の下にお薬を置きます。
舌の下に置くとすぐ唾液で溶けてなくなりますが唾液はすぐに飲み込まず、1分間舌の下に保持してください。
突然のショック症状、腹痛・嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸症状が現れることがあります。
この場合、ただちに救急車を要請するなど、迅速な対応をしてください。
そのほか、舌や口の中の腫れ、喉や耳のかゆみ、頭痛が副作用として現れることがあります。
この場合も、直ちに医療機関を受診してください。
治療開始後、2週間に一回通院していただいております。
治療期間中は少なくとも1か月に1回は通院してください。
まず初めに大切なことはスギ花粉症であることを明確に証明しなければなりません。
採血などの検査で診断をしますが、スギ花粉症の人にはハウスダスト等、他のアレルギーをもつ人も多くいます。
このように併発している人は効果に限りがあることをご理解ください。
ダニアレルギーの舌下免役療法
一般的には日本人の約40%がアレルギー性鼻炎を持っていると言われています。
アレルギー性鼻炎は、年間を通して起こる「通年性」と一定の季節に限って起こる「季節性」の2種類に分けられますが、日本人の約30%が季節性アレルギー性鼻炎で、日本人の約25%が通年性アレルギー性鼻炎を持っています。
お一人で季節性と通年性アレルギー性鼻炎の両方を発症している方もいます。
そして、通年性アレルギー性鼻炎の約90%はダニが原因と言われています。
アレルギー性鼻炎に関係するのは「チリダニ」です。
チリダニには「コナヒョウヒダニ」と「ヤケヒョウヒダニ」の2種類があり、その死骸や糞が原因でさまざまなアレルギー症状が引き起こされます。
どちらも高湿度の環境を好む傾向にあり、家の中のアチコチに普通に見られるダニです。
ダニ・ハウスダスト・ほこりの違い
アレルギー性鼻炎で受診すると、鼻炎を引き起こしている原因物質をつきとめるために血液を採取して抗体検査を行います。
そして、その結果の書かれた用紙を見るとハウスダストという項目を見つけることができると思います。
皆さんはハウスダストと聞くと家の中のホコリを連想される方が多いのではないでしょうか。
そのホコリを吸ったために止まらないくしゃみが出て、鼻水が止まらなくなるとお考えになるかもしれません。
確かに、家のチリやホコリに対してアレルギー反応を起こしているのに違いないのですが、厳密には目に見えるようなホコリに対してアレルギー反応を起こしているのではなく、その中にあるタンパク質でできているある物質に対してアレルギー反応を起こしているのです。
ホコリに含まれる物質はとても種類が多く、土・砂、繊維くず、毛髪、頭皮のふけ・皮膚の垢(あか)、食べかす、カビ、細菌、花粉、ダニの死骸・糞など。
つまり、ダニアレルギーを引き起こすダニの死骸や糞はハウスダストの中にある一つの物質です。
また通年性アレルギー性鼻炎のほとんどが、チリダニ(ヒョウヒダニ)の死骸や糞がアレルゲンです。
チリダニはイヌやネコを刺して吸血するダニとは種類が違い、目に見えないくらい小さくヒトのふけや垢を食べて生きています。
治療法
<対象者>
・3歳以上であること
・鼻炎の発症にダニに対する抗体が関与していることがはっきりしていること
・軽症から重症まで
<治療できない人>
・β遮断薬(降圧剤)を投与している人
・重症またはコントロール不良の気管支喘息の人
・全身性ステロイド薬の連用や抗ガン剤、免疫抑制剤を使用している人
・治療開始時に妊娠しているあるいは授乳中の人(維持量継続中に妊娠した方は継続可能と言われています)
・急性感染症に罹患している人
・自己免疫疾患の合併や既往、濃厚な家族歴を有する人
実施方法
1.問診・検査
問診と鼻鏡検査、血液検査や皮内テストでダニアレルギーであることを判定します。
2.服用のリズムの決定
1日1回、ほぼ決まった時間に舌下投与します。
いつ服用してもかまいませんが自分の生活のリズムに合わせて、例えば起床時というように飲み忘れのない服用時間を設定するといいでしょう。
また通常は心配いりませんが、万が一の重篤な副作用に備えて家族のいる場所や日中の服用がよいでしょう。
3.服用
服用方法は、規定量を舌下に含み完全に融けたら唾液で飲み下します。
その後5分間はうがいや飲食を控えます。
1週目は3,300JAU(アレルギー活性単位)、2週目は10,000JAUと増量し、以後10,000JAUを維持量として連日継続投与します。
なお、継続の目安は3年以上とします。
4.定期受診
最初は2週間に1回、その後月に1回は受診してください。
注意事項
②治療中に異常が認められた場合には直ちに医療機関を受診しましょう。
③誤って定量より多く口に入れてしまった場合は、直ちに吐き出してうがいをしましょう。
④誤って舌下に保持せず飲み込んでしまった場合は、再度の服用を行わず、翌日以降に改めて正しい用量用法で服用しましょう。
⑤服用を忘れた時は、同日中に気づいたときはその時点でその日の分を服用しますが、前日の飲み忘れに気づいてもその日の分のみを服用し、2日分服用してはいけません。
副作用
副作用として一番心配なのはアナフィラキシーショックです。
アナフィラキシーショックは特定の起因物質により引き起こされた全身性のアレルギー反応で、命にもかかわる重篤な状態です。
しかし、舌下免疫療法の場合、国内ではアナフィラキシーショックの報告はなく、先に治療を開始した欧米でも1億回の投与で1回程度生じたとの報告があるだけです。
<アナフィラキシーショックの前駆症状>
口内異常感、口唇のしびれ、喉の詰まった感じ、嚥下(えんげ)困難感、両手足末端のしびれ、心悸亢進(しんきこうしん)、悪心(おしん)、耳鳴り、めまい、胸部不快感、目の前が暗くなった感じ、虚脱感、四肢の冷感、腹痛、尿意、便意
そこで、過度に心配する必要はありませんが服用後このような症状を自覚したら、すぐに医療機関を受診してください。
そのほか注意しなくてはならないのは、咽頭・喉頭の腫れで、数%の頻度で起こるとされています。
また、ごく稀ですが喘息発作誘発もあります。
軽度の咽頭の刺激感や口腔の痒みや腫れ、耳の痒みなどが見られることがありますが、これらの多くは治療を継続することで自然に改善していきます。
我慢できないようなひどい症状が続く場合は医師にご相談ください。
生死にかかわるようなアナフィラキシーショックはほとんど起こらないと申し上げましたが、万一に備えてその対応をお伝えします。
多くの場合、服用後10分以内に起こります。
速い場合は約30秒後には起こり、一般に早いものほど重症と言われています。
ご本人が前述の前駆症状を感じた場合には早急に医療機関を受診してください。
当院では、万が一に備えてアドレナリンという注射で対処できるよう準備を整えています。
なお、重篤な症状(心肺停止、ショック状態、気道狭窄による呼吸困難)の場合は救急車を呼んで搬送し、救急救命の専門治療が必要となります。
また、投与後数時間たっても口腔や咽頭などの違和感、掻痒感、腫脹が軽減しない場合は、医師に連絡してください。
Q&A
3歳以上の方ならどなたでも対象となります。
ただし、他の病気をお持ちの方や服薬しているお薬によってはできない場合もあります。
徐々に体質を改善するのが目的ですから、薬物療法と違いすぐに効果が現れるわけではありません。
個人差はありますが、一般的に3年以上の治療期間が必要だと言われています。
舌下免疫療法はダニ(ハウスダスト)アレルギーの患者さんを対象とした治療なので、
ダニ(ハウスダスト)アレルギーであることを判定しなければなりません。
そのためには血液採取による抗体検査が必要です。
舌下免疫療法は注射による痛みがなく自宅で治療できることで注目されていますし、
皮下注射法より副作用が少なくて安全です。
経過観察や薬剤を処方するために、定期的な通院が必要となります。
開始当初は2週間に1回、安定してくれば1ヶ月に1回の通院が必要です。
舌下免疫療法を行っていても、鼻炎の症状がでたら適切にお薬を使ってください。
舌下免疫療法の目的はアレルギー薬の使用量を少なくすることと症状を軽減することなので、
全ての方が薬を飲まなくてすむわけではありません。
ただし、免疫の力で体質を改善する治療法ですから免疫能力に関係するステロイドの内服薬の併用は控えるようお願いしています。
なお、ステロイドの点眼薬・点鼻薬は局所で作用し全身に影響しませんので、舌下免疫療法と併用して構いません。
約3年行えば治療を止めても効果が長く持続すると考えられていますが、できれば4~5年行うことを勧めています。
舌下免疫療法は、数年で効果が高まると考えられるので、まずは2年をめどに開始し、効果の得られた方には4~5年の継続をお勧めします。また、一度終了しても何年も経過すると症状が出てくる方もいます。
その場合には、その時点で再度1~2年間の舌下免疫療法を行うと効果が元に戻ると言われています。
歯科治療中、口内炎や口腔内に傷がある場合は服用を一時中止します。
一時中断した場合の再開は医師による判断が必要なので、7日以上中断した場合は受診して医師の判断を仰いでください。
また、継続がどうしても難しい場合も必ず医師に連絡してください。
複数のアレルゲンエキスの併用の安全性と効果は、まだはっきりと確認されていません。
アレルギー反応を含む副作用の可能性が増すことも考えられますし、個人により差も大きいので個別に相談してください。