中耳炎
中耳炎とは
中耳炎は、鼓膜から奥の部分に炎症が起こる病気です。
・内耳に浸出液が溜まる「滲出性中耳炎」
・他に「慢性中耳炎」「真珠腫性中耳炎」「航空性中耳炎」
などもあります。
一般的に「中耳炎」とだけ言う場合、急性中耳炎を指すことが多いようです。
中耳炎の原因
中耳は耳管という管で鼻や喉とつながっています。
中耳は中耳腔で一定の空気が満たされています。
カゼをひいて喉や鼻の炎症が耳管に及んで耳管炎という状態になると耳管の粘膜が腫れて中耳腔が陰圧となり、耳が塞がった感じや難聴、耳鳴りなどの症状を起こします。
耳管の炎症がさらに中耳腔までおよぶと中耳炎となります。
滲出性中耳炎は小児と高齢の方に多く見られます。
また慢性的に鼻に疾患がある場合(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など)や アデノイド肥大などがあると耳管が圧迫されて狭くなり、これが原因となって中耳炎を起こすこともあります。
耳管とは
耳管の最も重要な役割は、鼓膜の内側と外側の気圧を一定に保つことです。
鼓膜の内側の鼓室は耳管を通して外へとつながっていますが、耳管は普段は閉じており、あくびや嚥下の際に開いて外の空気を鼓室内に取り入れ、気圧を一定に保っています。
乳幼児期には耳管機能はまだまだ未熟で十分な働きができません。
なので急性中耳炎や鼻の炎症などをきっかけに、すぐに鼓室の換気が悪くなってしまいます。
耳管機能はその後、成長とともに発達して10歳位でほぼ成人と同等の機能が備わるといわれています。
また耳管の換気機能は、加齢により低下し50~60代以降には徐々に低下していきます。
子供と中耳炎
こどもが中耳炎になりやすい理由は大きく分けて3つあります。
①耳管の構造
耳管が大人よりも太く、耳と鼻が水平の位置にあります。
耳管がつながっている上咽頭に細菌がいると太くて水平な耳管を通って簡単に細菌が入ってきてしまいます。
大人になると耳のほうがたかい位置にあり、耳管も斜めになっているので細菌が入りにくくなるのです。
②感染症にかかる機会が多い・鼻水がうまくかめない
子供は鼻をかまずにすすってしまうことが多く、鼻水が鼻の奥にたまり耳管の入り口を刺激します。
そして中耳炎を起こしやすくなります。
また子供のうちは、風邪やそのほかの感染症にかかる機会も多く、これが鼻水の原因となっていることが多くあります。
特に幼稚園や保育園などで集団生活をしていると、治っては次の風邪といったことも多くみられます。
③アデノイド肥大
別名・咽頭扁桃
3歳頃から大きくなり、6歳頃をピークに少しずつ小さくなって12歳頃には消失します。
幼児期にはしばしばアデノイドが肥大することがあります。
アデノイドが肥大すると耳管の入り口をふさいでしまい、中耳炎になりやすくなります。
このような条件がそろっているために、子供ものうちは中耳炎にかかりやすくなっています。
感染症の予防や悪化防止、鼻すすりの癖をやめさせるなど中耳炎にならないよう気を付けることも大切です。
中耳炎の検査
中耳炎の場合はまずは現在の状態を把握するめに以下のような検査を行います。
<標準純音聴力検査>
いわゆる聴力検査です。
防音の施された検査室で様々な周波数の音を聞いていただきます。ただしこの検査は音が聞こえてきたらボタンを押していただく検査なので、
小さなお子さんは検査結果が正確に出ない場合があります。
<ティンパノメトリー>
イヤホンのような機械を耳に入れ、鼓膜に圧をかけて鼓膜の動き、中耳の換気機能などを診る検査です。
少し鼓膜が圧迫されるような感じはありますが、痛みはほとんどなく、小さなお子さんでも検査できます。
聴力検査およびティンパノメトリー検査をすることにより、中耳に液体が貯留しているかを知ることができます。
上記の検査の結果で中耳の浸出液の貯留の状態がわかります。
検査結果を元に治療方針を立てていきます。
また治療の途中で滲出性中耳炎の治療効果の判定のために検査を行うこともあります。
色々な中耳炎
『急性中耳炎』
• 耳の痛み
• 発熱
• 耳だれ
• 耳が詰まった感じで聞こえにくい
小さい子供の場合は痛みを訴えられないために機嫌が悪くなったり、夜泣きをしたり食欲が無くなったりします。
頻繁に耳をさわり気にする時は疑ってみましょう。
中耳に細菌やウイルスが入り、急性の炎症がおきて膿がたまる病気です。
風邪、鼻や喉の炎症に引き続いておこることが多いです。
よく誤解されることが多いのですが、耳の外から水や菌が入って急性中耳炎になる事は実際には稀なケースです。
さらに進行すると鼓膜の一部が破れて、外耳道に流れ、耳だれが出てくる場合もあります。
大人の場合は重症化、難治化することは比較的少ないのですが、乳幼児、特に保育園などの集団保育を受けている場合には何回も再発し、重症化、難治化することがあります。
<治療法>
急性中耳炎の場合は、炎症を抑えるために抗生剤を処方します。
たいていの場合、鼻や喉の炎症が原因になっていますのでこの治療も合わせて行っていきます。
それぞれの病態にあった抗生剤を処方して服用していただきます。
膿がたまって鼓膜がはれ、痛みが強いときや高熱が持続する場合は、鼓膜を少しだけ切って膿を出すこともあります。
鼓膜の傷は通常数日でふさがります。
急性中耳炎を放置すると再発や、鼓膜の穴の閉鎖不全、難聴の原因となる滲出性中耳炎に移行することがありますので注意が必要です。
近年では、抗生物質に対して抵抗力を持った細菌が原因の急性中耳炎が問題になっており、抗生物質の使い方についてクリニックや薬局の服薬指導をしっかりと守って頂くことが重要です。
『滲出性中耳炎』
大人の場合
• 山に登った時のような耳がつまった感じ
• 耳に栓をしているようで聞こえにくい
• 自分の声が耳に響く
• 耳の中で水の音がする
※子供の難聴の多くはこの中耳炎によるものです。
• テレビの音を大きくする
• 大きな声でおしゃべりする
• 呼んでもふりむかない
• 電話でのおしゃべりができない
風邪をひきやすい、いつも鼻がぐずぐず、咳が続く、ちくのう症(慢性副鼻腔炎)やアレルギー性鼻炎で、いつも鼻汁・鼻づまり、くしゃみがある子供、いびきが大きい子供は滲出性中耳炎を併発することが多く注意を要します。
上記症状などが見られる時は確認してみましょう。
滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)とは中耳に水がたまったものです。
この水は「滲出液(しんしゅつえき)」といわれ、体のなかにある水分で、やけどなどでできた水ぶくれもこの滲出液です。
耳管の働きが悪くなると、気圧のコントロールが十分できなくなります。
このため中耳の気圧がだんだん低くなって鼓膜はわずかにくぼんだ状態になり、この状態が続くと中耳に滲出液が染み出てくるのです。
液体が中耳に溜まった結果、難聴・耳のつまった感じ(耳閉感)・耳鳴りおよび自分の声が耳に響くなどの症状が起こります。
滲出性中耳炎の場合、急性中耳炎ほどのはっきりした症状が出ないことが多いので、小さなお子さんの場合このような症状をうまく訴えられず、親御さんは気が付かないことも多くあります。
<治療>
急抗生物質や消炎酵素剤などを内服していただき、滲出液がたまらないようにします。
また、中耳の換気を良くするために鼻から耳へ空気を通す耳管通気という処置も合わせて行います。
これは人工的な「耳抜き」です。
大人の場合は鼻から管を挿入して耳へ空気を送り換気します。(カテーテル法)
お子さんの場合は「ラッパ」や「学校」などと発音してもらい、医師がそのタイミングでゴム球を使い鼻から耳へ空気をおくる処置を行います。(ポリッツェル法)
投薬と通気を併用することで治療効果が上がります。
2~3ヶ月間そのような治療をして、滲出液が抜けないようなら鼓膜を切開して滲出液を出すこともあります。
(鼓膜は切っても通常数日でふさがります。)
また、鼻やのどの炎症が潜在する場合がほとんどですから、鼻やのどの治療も必要です。
医師の指示で服薬し、鼻の処置や通気のための通院が必要な場合もあります。
また鼻すすりの癖をやめる、鼻水をかむ習慣づけも必要です。
滲出性中耳炎は治療期間が長くなることも多く、頻繁に症状を繰り返す方も少なくありません。
特に10歳くらいまでのお子さんやご高齢の方に多くみられます。
こどもは耳管の構造上の問題、ご高齢の方は年齢的に耳管の機能が低下して滲出性中耳炎を起こしやすいと言われています。
小児の滲出性中耳炎は10歳前後で自然に治癒する場合が多いので、繰り返しやすい場合は定期的に診療し、分泌液が溜まればその都度排除していく必要があります。
滲出性中耳炎を繰り返す方の中には、鼻の疾患(副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎など)が原因となっていることもあり、そちらの治療も合わせて行うことも大切です。
『反復性中耳炎』
• 耳の痛み
• 発熱
• 耳だれを繰り返す。
乳幼児期に急性中耳炎を繰り返すことを反復性中耳炎と言います。
また滲出性中耳炎合併型では難聴も続きます。
反復性中耳炎には純粋に急性中耳炎のみを繰り返す場合と、滲出性中耳炎を合併している場合があり多くは後者です。
反復性中耳炎は、
・低年齢での集団保育を受けている場合
・厚生物質に抵抗力を持った細菌が原因の中耳炎の場合
などに引き起こすことが多いとされています。
お子さんが幼稚園に通い出したら風邪をひきやすくなったという経験をされた方も多いと思います。
小さければ小さいほど免疫力が弱く感染症にかかりやすくなります。
また、幼稚園や保育園に通い出すとお薬を1日3回きちんと飲めないことが多くなることも治りずらくなる要因とも言われています。
<治療>
初期治療は急性中耳炎と同様、抗生剤の投与ですが抗生剤に免疫を持った薬剤耐性菌が原因の場合、通常の急性中耳炎の治療のみでは良くならない場合も多くあります。
そのような場合はさらなる治療が必要となります。
・内服の抗生物質の倍量投与
通常量の1.5~2倍のペニシリン系抗生物質を内服して、抗生物質の血中濃度を高め薬剤耐性菌をやつける方法です。
通常よりも多い抗生剤の服用となるので、下痢などの消化器症状が強く生じる場合もあります。
・鼓膜切開
投薬だけで不十分な場合は、薬液で鼓膜に直接麻酔をかけ切開を行い排膿させます。
・耳の中の洗浄、消毒
鼓膜に穴が開き、膿が排出されるような状態の場合は、洗浄や消毒を行います。
洗浄・消毒し清潔に保つことで改善していきます。
『慢性中耳炎』
• 耳だれ
• 難聴
• めまいを感じることがある。
耳の痛みや発熱はほとんどない。
難聴は穿孔の状態と穿孔の位置にもよりますが、かなり大きな穿孔でも聴力にはあまり影響しない場合もあり様々です。
急性中耳炎や浸出性中耳炎、または鼓膜外傷などが完治せずに鼓膜に穴が開いたままの状態を指します。
鼓膜は本来再生能力の強い器官で、穴はたいてい自然に閉鎖しますが、体質や感染、急性中耳炎の治療の不備(昔の抗生物質もなかった時代)などによる炎症の長期化等の原因で閉じないことがあります。
正常の鼓膜とは異なり、慢性中耳炎の耳では外耳道から中耳腔へと細菌の侵入が簡単に起きるので、感染をくり返し起こすことが多いです。
<治療>
症状が軽い場合には抗生物質の服用、耳だれの吸引や薬液による局所の洗浄によって治療を行います。
また点耳をして炎症を抑えることによって耳だれを止めることもあります。
鼻の症状がある場合は急性中耳炎や滲出性中耳炎と同じく鼻の治療も並行して行っていきます。
感染の慢性化の要因を明らかにし、耳を乾燥させる保存的治療が先決で、その後の経過に応じて手術的治療が必要となる場合があります。
<日常生活の注意点>
感染を起こさないために
・耳かきをしない
・風邪をひかないように注意する
お風呂に入る際には、綿球や耳栓をすることをおすすめします。
また滲出性中耳炎や反復性中耳炎が進行して慢性中耳炎では?と心配されることもありますが、その都度きちんと治療をおこなっていれば、慢性中耳炎に移行することほぼありません。
『癒着性中耳炎』
• 難聴
※ただし、難聴の症状は片側の耳のみの場合が多い。
鼓膜がへこんで、中耳の壁にくっつく病気です。
割合的には慢性中耳炎の約10%とさほど多い病気ではなく、滲出性中耳炎が治りきらず移行するケースが多いです。
<治療>
鼓膜をはがしてきちんと張り替える「鼓膜形成手術」を行います。
また耳小骨が破壊されている場合は、「鼓室形成術」も必要になります。
手術を行えば、聴力はかなり回復するでしょう。
ただし耳管の働きが悪化していることが多く、せっかく手術を行っても再び鼓膜がへこんできて再発しやすいという問題があります。
『航空性中耳炎』
• 飛行機に乗っていると耳がキーンとしたり、耳がつまったような感じになる。
• 耳閉感、耳鳴、頭痛
経験されたことがある方も多いと思います。
通常はあくびや唾を飲むなどの嚥下(えんげ)で解消されますが、時には耳痛、耳閉感、難聴、耳鳴、頭痛などが続くことがあります。
これは航空性中耳炎と言って急性中耳炎の一種です。
上空では地上よりも気圧は低くなります。
中耳は飛行機の下降時には陰圧になり、鼓膜が内側にへこんだ状態になります。
耳管がうまく機能しないと耳が塞がった感じや、痛みを感じたりすることになります。
耳管はもともと陰圧になるとこれを戻すのが苦手な性質があり、機体が着陸態勢に入る時に症状がひどくなる傾向があります。
<治療>
治療は中耳炎と同様、鎮痛消炎剤・抗生剤の内服や、耳管から空気を入れる耳管通気療法が主体です。
症状がひどい場合には、浸出液を排膿するために鼓膜切開をおこなうこともあります。
飛行機に乗るたびに繰り返し起こす場合や治りにくい場合はもとの耳管機能に問題があることも多く、副鼻腔炎などの感染症や、花粉症などのアレルギー性疾患がある場合もあります。
また稀ですがのどの奥の上咽頭に腫瘍がないか検査が必要なこともあります。
<予防法>
機体が高度を下げていく前からチューインガムやあめをなめると効果があります。
手元に何もない場合は唾を飲み込むだけでも効果があります。
乳幼児の場合はミルクやジュースを飲ませるといいでしょう。
またおしゃぶりをくわえさせるのも効果があります。
飲酒は耳管周囲の粘膜を腫らせたり、眠って唾を飲む回数が減ってしまうのでおすすめできません。
耳抜きした際、圧力のかけ過ぎは危険ですので2・3回試してうまく出来ない時はやめておきましょう。
風邪をひいたり、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などで鼻症状ある人は予め治療をしておくことが大切です。
『真珠腫性中耳炎』
• 悪臭のある耳だれ
• 難聴 (初期には軽度)
• 顔面神経麻痺や強い頭痛、発熱
小さいときから中耳炎を繰り返していたり、慢性中耳炎がある方で悪臭を伴う耳漏がでてきたら要注意です。
真珠腫性中耳炎とは、鼓膜の一部が内側(中耳)に陥凹しておきる中耳炎です。
腫という字がありますが腫瘍ではありません。
鼓膜の表面は外耳道の皮膚と連続していますので、角化物(垢)が出ます。
正常な場合は耳垢として排泄されますが、
鼓膜が陥凹するとその内側に角化物が溜まりやすくなります。
多くは滲出性中耳炎を繰り返したり遷延して陥凹化した袋状の鼓膜が鼓膜の中の壁とくっついたり、奥深くの空洞へ徐々に入り込みます。
この袋の中に角化した鼓膜の上皮が重なって溜まっていくのです。
その溜まった角化物(垢)が真っ白で真珠のようだから「真珠腫」と呼びます。
真珠腫は、やがて炎症を起こし鼓膜を侵していきます。
白血球など炎症細胞の放出するいろいろな酵素やサイトカインと呼ばれる物質が、鼓膜上皮を増殖させたり、まわりの骨を破壊吸収します。
鼓膜の創傷治癒が妨害されたために過剰に上皮が増殖するという説もあります。
こうして、まわりの骨や組織を破壊しながら徐々に大きくなるわけです。
この角化堆積物が細菌や真菌の培地となり感染、炎症がおこります。
この炎症により、周囲の骨を破壊しながら増大するとされています。
<治療>
後天性真珠腫と比べると病気の進行は遅いのですが、放置すれば徐々に大きくなって周囲に進展していきます。
徐々に増大して骨を破壊するので、早期に手術を行って完全に摘出します。
さらに耳小骨連鎖(じしょうこつれんさ)が破壊されている場合は、連鎖再建術も同時に行います。
時期を逃さず摘出すれば予後は良好です。
『先天性中耳炎』
• まれに難聴
• 急性中耳炎による耳の痛み
• 顔面神経麻痺
• 難聴
胎生期(赤ちゃんが子宮のなかで発育している時期)に、耳のなかに上皮細胞が迷い込んで増殖するものを先天性真珠腫(せんていせいしんじゅしゅ)と呼びます。
頭部のさまざまな部位に発生しますが、ほとんどは耳の骨の近くに発生します。
真珠腫性中耳炎全体のうち、先天性の占める割合は5%くらいといわれています。
<先天性真珠腫の症状と受診のポイント>
先天性中耳炎は2つに分類されています。
クローズ型
乳幼児期に発見される嚢胞型(のうほうがた)は、正常な鼓膜のなかに白色塊が透けて見えて、鼓膜に白色塊が接しているのが確認できて初めて診断されます。
耳あかを取る時や3歳児健診の時に偶然発見されることが多く、それまで耳の症状はほとんどありません。
まれに難聴、または急性中耳炎による耳の痛みで耳鼻咽喉科を受診して発見される場合もあります。
オープン型
学童期から成人になって発見されることが多い膜型(まくがた)は、難聴の原因検査をして見つかります。
鼓膜を見ても、真珠腫ははっきり見えません。
鼓膜は正常に見えることが多く、伝音難聴の治療目的の手術で発見されます。
中耳よりも深部の乳突洞に発生するタイプでは、顔の動きが悪い、口から水がこぼれるなどの顔面神経麻痺症状で発見される場合があります。
<検査と診断>
鼓膜をよく観察することが重要で、正常鼓膜の奥に白色塊を確認することで診断できます。
しかし中耳にあっても膜型や、耳小骨の裏面、乳突洞内など隠れた部位に発生したものは耳鏡所見では発見できません。
このような場合は側頭骨ターゲットCTが不可欠であり、かなり小さな真珠腫まで診断が可能です。
聴力検査は、真珠腫による伝音難聴、混合難聴の程度を把握するために実施し、乳幼児では聴性脳幹反応(ABR:脳波を使った聴力検査)を行います。
先天性真珠種に似ている病気は、
良性腫瘍(神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)、腺腫(せんしゅ)、グローム腫瘍)、コレステリン肉芽腫(にくげしゅ)などです。
また(後天性)真珠腫性中耳炎と区別がつかない場合もあります。
<治療>
後天性真珠腫と比べると、通常は病気の進行は遅いのですが放置すれば徐々に大きくなって周囲に進展していきます。
徐々に増大して骨を破壊するので、早期に手術を行って完全に摘出します。
さらに耳小骨連鎖(じしょうこつれんさ)が破壊されている場合は、連鎖再建術も同時に行います。
時期を逃さず摘出すれば、予後は良好です。